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e-bookをつくる

課題概要

任意の絵本を選び、その特徴、装丁から作者の意図を汲んでe-book化する。

 

 

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選んだ書籍の概要

タイトル:「じぶんだけの いろ」

作:レオ=レオニ 訳:谷川俊太郎

 おうむは緑、豚は桃色等、動物にはそれぞれ決まった色がある。ところがカメレオンは、環境の色に溶け込むように体の色が変わってしまう。「じぶんの色が欲しい」と、アイデンティティを求めて色を探すカメレオンの話。

 
     
 

この書籍を選んだ理由

 僕がこの本をe-Bookの制作課題に選んだ理由は、幼少時から読んでいて親しみがあった事と、この豊かな色彩感をe-Book化する事でさらに魅力的にしたいと考えたからである。

作品コンセプト

 まず全体を通してのコンセプトとしては「手作り感」を意識した。特徴的な絵のタッチもあり、この世界感を壊すようなデジタル的な動作は避けようと心がけた。だが最終的には「いかにもflash」というような手法も用いてしまい、反省すべき点である。あとはページを読み進むテンポ、特に単語一つ一つの出るタイミングには気を遣った。

 この本の冒頭は「動物には固有の色があろ」という事の提示からはじまる。それをe-bookによっていかに刺激的な変化をさせるか、という事を考えた。結果として取り入れたのは動物の「形」と「色」の情報を分離してしまおうというアイデア。具体的には、まず動物が外郭から現れ、この動物は何色か、を塗り絵的に意識させる。そして消滅時にはブラーがかかり、色が動物の形を失う。限りなく純粋に色そのものの存在を意識させ、その動物には普遍的な色があるという事を認識させようと工夫した。

 中盤、「はっぱの上にずっといれば緑のままでいられる」という考えを実践するシーンが出てくる。今回そこにのみ、インタラクション的といえるトランジション効果を取り入れた。その理由は、ここのシーンには読者の予想を裏切る、想像力へ訴えかける工夫が装丁上からも見受けられたからである。まず前ページでは読者もカメレオンの考えに同調する。そして実践し、ずっと緑でいられるかと思いきや、紅葉によって葉が黄色に変化し、カメレオンも色が変わってしまうという、読者におどろきを与える工夫が「ページをめくる」行為に隠されている。この特徴をe-bookでさらにインタラクティブな表現に置換しようと試みたのが、このトランジション効果である。

リフレクション

 制作にあたりこの本を分析すると、「動物固有の色」の存在をいかに理解させるかを意識した造りになっている事がわかり、また「自分の色」すなわち「アイデンティティ」を持つ事ができず悩んでいるカメレオンの思考展開の重要性等、単純に思えた本の中からも様々なポイントが発見された。実際の作品にそれらのポイントを落とし込む事がなかなか出来ずに悩んだが、結果として制作時に優先点が絞られ、楽に制作方針の設定ができる事につながった。

 当初は「近視眼的」との指摘を受けた事からもわかるようにFlashという技術に捕われ、本の重要点や表現の優先順位等に頭が回らなかった事を考えると、自身としても成長したのではないかと思う。全体を意識した作品作り、一歩深く考察する事等、基本的で既にできていると思い込んでいた事柄についてさらに考えさせられる機会となり、今回の経験は自身の成長につながったと実感している。

遷移図(初期段階)